激しい剣戟の割に、意識していないのだろう、松原組長の足元は少し隙が目立っていた。


対して藤堂はと言うと、一見悪いところは見当たらない。戦いの勘はいいし、実戦という意識が働いていて隙があまりない。


だが無謀だ。相手の実力を計り損ねているのか、はたまた、嘗められているのかのどちらかである。


おそらく前者であろうが。


ため息を吐いた光は構えを解き、竹刀を下ろした。「これで今日の四番隊と九番隊の稽古は終わりです」


「――え、途中じゃん?!」


頬を膨らませた平助は、光に稽古の再開を要求するが、光は迷った様子も無く、首を左右に振った。


「すみません、平助。しかし、決着を付けることは大切ではありません。短所を理解して、それを改善するためです」


「……敬語使わなくていいってあれだけ言ったのに、また戻ってる! 稽古中は違ったのにな……」


腰に手を当てて声を上げる藤堂は、とてもじゃないが、隊をまとめ上げる組長の姿には見えなかった。


それを聞いた光は笑って流そうとしたのだが、どうしたものか、敬語を外さないと許してくれなさそうな雰囲気である。


「…………平助、稽古は終わりだ」


仕方なしにそう言うと、平助は「おう!」と、途端に元気な声を張り上げた。