「山崎か、ちょうどいい。井岡が悪酔いしてな。悪いが引き離してくれないか」


「はい」


困ったように頼む土方に、襖から入ってきた人物――山崎は一つ返事で了承した。


抱きついたまま微動だにしない光のそばに近づくと、山崎は光の肩を揺さぶり「光、起き」と声を掛ける。


――だが、動かない。


「ったく……誰と間違えてるのかは知らねえが、俺は『先生』じゃねえぞ」


流石に苛立ちを感じた土方がそう愚痴を漏らすと、傍にいた山崎が驚きの表情で土方の顔をまじまじと見つめた。


「光は貴方を『先生』と……?」


「ん? ああ、まあな。そうしたら今みたいに抱きついてきやがってな」


今までの経緯をザッと説明すれば、山崎は光をぼんやりと見つめながら、何かを思案し始める。


しばしの後、山崎は意を決したように顔を上げると、おもむろに口を開いた。


「『先生』とは…………、俺と光の大切な師匠です。きっと、副長と似ていたために間違ったのだと思います――――」