「先生? 何言ってんだ……」


珍しくも土方は、酔っ払った部下をむげに扱うことができないようで、困惑の色を露わにしていた。


「あれ、近藤さん、土方さーん? まだここにいるんで……って……何してるんですか、井岡さん…………」


襖を開けて入ってきたのは、ゆったりとした夜着に着替えた沖田だった。長い髪は背中に流れ、妖艶さが増している。


彼は、土方に抱きついている光を見ると、びっくりしたように目を丸く見開いた。
「…………井岡さんって――、」


「井岡は酔っ払ってるだけだ。コイツは芹沢さんが悪酔いさせてな、引っ付いてきやがった」


まるで『その先は言わせねえ』とでもいうように、鋭い眼光で沖田を睨んだ。


睨まれた当人は、横をふいっと向いて、態とらしいため息をつく。
「なぁんだ、つまんないな。土方さんと井岡さんは男色関係かと思ったのに」


「黙れ」


「でも井岡さんはね……」沖田は、珍しくニヤリと唇を歪ませた。「知ってます? 井岡さんと念友になりたい人はたくさんいるんですよ……?」


念友とは、男同士で肉体関係がある人のことだ。それを聞いても、土方は表情を少しも変えることはなかった。


その時「――失礼します」という落ち着いた声と共に、沖田が入ってきた所とは別の襖が開いた。