「……俺みたいな武士? こんな血塗れた鬼に憧れてやがるのか。それに俺らのほとんどは、百姓や商家出身だ。
――悪趣味なんだよ、お前……」


「……貴方はれっきとした武士ですよ」
笑って流そうとした土方にそう告げた。


しばらくの気まずい沈黙を経た後、土方は堪えきれなかったように、「クッ……」という忍び笑いを漏らした。


「本当に面白ぇ奴。俺と同じ“鬼”を飼ってやがる。その上、この俺に一丁前な口を利きやがるんだからな……」


「………………」


「何で『なりたかった』って言うのかは知らねえ。だが、もし俺を目指して付いてくるのなら……せいぜい“鬼”に呑まれちまわねえように……心身、精進するこった」


すっかり鬼の面を付けてしまった土方は、ふん、と鼻で嘲笑すると、光の頭を強めに叩いた。


――それは彼なりの叱咤激励。


そのまま土方は、座っていた温かい縁側から腰を上げ、くるりと背中を向けると、その場所から去っていく。


光には見えなかったが、土方はまるで面白いものを見つけ出したように、瞳に喜悦の色を滲ませていた。