「……残念ですが、1対1の実戦では、あまり使えないでしょうね。
実戦を経験していない隊士は、十中八九、動けずに斬られます。まあ、組長や他の隊士がいるので、本当に斬られないとは思いますが。
剣道が優れていても、実戦では役に立たないことが多いですから――……」


「まあ、その通りなんだろう」


情けねえがな、鼻で嘲笑した土方は唇の端を釣り上げて、威圧感のある挑戦的な笑みを浮かべてみせた。


「――――そこでだ。お前は総司に勝ったんだから、稽古をする隊に指南すればいい。そうすれば隊士は強くなるし、嫌な噂は無くなる。上手くいけば、殺気の主も分かるかもしれねぇ」


「なるほど……それは一石がニ鳥にも三鳥にもなるというわけですか。流石です」


まいった、とばかりに、光は少し困ったように微笑み、頭を垂れて平伏した。


「一番隊から三番隊は総司、永倉、斎藤だから指導力は足りているが、問題はそれ以外だ。…………いいか?」


「はい、勿論です」


珍しくも、柔らかく微笑む土方の表情を見て、光は自分の表情も緩むのが分かった。そのままジッと土方の顔を見ていると、不思議に思った土方は首を傾げる。


「俺の顔に何か付いてるか」


「いえ…………、土方副長は、もう私をお疑いになっていないのか、と思いまして」


苦笑いを浮かべて言うと、土方はさも可笑しそうな笑い声を上げた。