すると視界が陰った。


ふわりと柔らかな温もりに包まれる。光は、優しく暖かくて離れられなくなりそうなそれを知っていた。


「……俺が……、壬生浪士組のみんながおる……昔みたいにやっとればええ」


悲しい程に優しく、慈しむような声音でそう言うが、光の身体はますます震えが酷くなる一方だった。


離せ、と言い放ち、固く握りしめた拳で彼の胸板を強めに叩いた。ドンという音がするが、鍛えられた身体は少しも動かない。


「……帰ろ」そう短く言った山崎は光を捕らえていた腕を離して、小屋から出て行った。


――認めない。認めたくない。


壬生浪士組は、浪士を斬るために利用する止まり木であっても、大切な人ではない。ただそれだけでいいはずだ。


たとえ敵を容赦なく斬り捨てることができようと、大切な人の死に目に合う勇気など持ち合わせていないのだから。


(……優しくしないで…………)


そう思って、自分の心から目を背けた。