「……どうかな。未来はどうにも息が詰まる」


いじめを受けたわけでも、衣食住に困っていたわけでもない。ましてや、両親からは虐待など受けた事はなく、深い愛情を注がれていたと思う。


他クラスの生徒には沢山の知り合いがいたし、部活の陸上部では少しはいい成績を残したりもしていた。


だが、クラスメートの視線に隠された、ある種の突き刺さるように痛いものに、居心地の悪さを感じていただけだ。


今思えば、くだらないことだ。だが、思春期の当時は、ひどく気になったものだ。





白黒の映像を脳裏から締め出し、山崎に正面から真っ直ぐに向き直った。


「――……あの世界とは決別したんだ。人を手に掛けるたびに、あの世界までに何人が死のうと、この時代の人間として生きるって」


だけど……、と息を吸った。


「先生に恩返ししたいって思っていたのに。もう……、」


昔馴染みだからだろうか、感情を上手く隠すことが出来ずに要らない事を口走る。


涙が流れる事のない、空虚な呟きだ。