「――任務達成だよ」


「…………お疲れさん……」


月明かりに照らされた山崎の横顔は、どことなく物憂げで女である光も息を呑んでしまうほど艶やかだった。


そんな山崎の横を通り過ぎ、小屋の奥で素早く着替え、すぐに山崎の元へ走った。


「怖いか?」
山崎は表情のない顔と声音で尋ねてくる。


「……何が?」


「…………人殺したないんやろ」
俺にはバレとるわ、と山崎は少し意地の悪そうな笑顔を浮かべて呟いた。
「人はそう簡単には変われへん。お前も根っこはおんなじやし」


手招きをした山崎に釣られて彼の近くまでよると、同じように壁に寄りかかった。


(……同じ訳がないだろ。あの時の“あたし”じゃ人殺しができるはずがない)


昔の自分は、目が眩む程に純粋。もしくは意地を張って、身近にある幸せを鼻で笑う子供。思わず目を背けたくなる程に愚かだった。


「……さあね」