心底驚いたような、それでいて見下しているような嘲笑を浮かべる。


それが頭に来ることだと理解していて、わざとやっているのだ。


「すぐに殺すはずでしたが……」


キィン……という金属音が響いたと思ったら、妖しく黒光りするクナイが男の首に当てられていた。


「――私は貴方に興味がわきました」


ひくりと上下する喉仏に白刃をさらすと、寒くはないはずなのだが、男から冷たい汗が噴き出す。


「……貴、様……何者だ……?!」


途切れ途切れに言葉を紡ぐ男の瞳に映るのは、底のない恐怖だ。彼は際限なく生み出される畏怖に、足が竦んでいる。


「自分はただの下男だと申したはず。……1つ聞きます。これは妖刀ですか?」


右手はクナイを握り締め、左手では男の刀の鞘をカツンと繰り返しつついた。


それは海の青のように蒼白で、思わず見入ってしまうほどに美しい。なぜか、暗い夜の闇の中でも、色がはっきりと分かった。