――弱い。弱すぎる。


男の前を歩きながら光は思案していた。


しかし、肌をチリチリと焦がすようなこの威圧感のようなこれは一体何なのだろう。殺気とは違う、無感情で冷たい空気だ。


それは紛れもなく、後ろから付いてきている男から発せられている。だが、あの酔っ払い自体は弱く、脆い。


(どういうことだ……?)


高い位置で輝く三日月を見て自問する。だからといって、答えがでるはずもないのだが。


「……おいお前! 道は合っているのか? 島原からは離れているぞ」


怪訝に思ったのだろう。男は大きな声でがなり立てた。そのせいか、酒で赤くなっていた男の頬は、すっかり素面に戻っている。


光は驚いたように声を上げた。


「へえ…………貴方、泥酔しているのかと思いましたが、存外、酒は強いのですね」