無愛想に「いや、気にするな」と投げやりに返す土方だが、急に変化した光の態度に戸惑いを隠せていなかった。


「……行くで、光」
背中に回る腕に、グッと抗えないほどの強い力が入る。2人は上司に一礼してその場を去った。









残された土方は、珍しくも足音を立てて廊下を歩いていく山崎をしばらくジッと見つめていた。


曲がり角で見えた山崎の表情は、これはまた珍しいことに無表情の仮面ではなかった。
――愛しい者を見つめるような、熱の籠もった視線に少しの哀しみを含んだそれ。


(山崎…………男色だったのか?)


脳裏に過ぎる邪念を追い払おうとするが、それはやがて大きな疑惑になって土方に迫り来ることになった。


井岡のツラじゃあ、男でも惚れちまいそうだからな。無理もねぇ……、と苦笑しながら首を振り、仕事に取り掛かった。