「私は……生きて必ず、」
「――光」
限りなく優しい山崎の声。それが頭上から降りかかり、言いかけた光の言葉をさり気なく遮った。
だが、今はその優しさに心が痛む。
俯き、何も言えずに黙っていると、山崎は後ろから光の背中にそっと手を当てる。
そして、口を挟めず、立ちすくんでいた土方に頭を下げた。
「……すんまへん。光は俺に任せて下さい。任務もちゃんとやりますんで」
「…………ああ」
それまで下を向いて深く俯いていた光は、ふいに土方の顔をみて、山崎同様に頭を下げた。
――不自然なまで丁寧に。
「土方副長、取り乱して申し訳ありません。沖田さんと平助から聞きました。私を街に出そうと気を遣っていただいて、とても嬉しく思います」
すでに先程の翳りはなく、光は優雅なまでに微笑んでみせた。にこり、という表現がここまで似合う笑みも、そうそう無いに違いない。
決して笑わない冷たい眼。
完璧すぎて人間味が無い笑み。
馴染みである山崎は、それがただの強がりであると分かる。しかしながら、知り合って日も浅く、関係が薄い土方は、そうは行かない。