彼はここにいる誰よりも強い、と断言できる。武術が秀でているだけでなく、誰よりもその真髄を理解していると感じるからだ。


左手に短刀のような木刀を逆手に持って構え、右手一本で太刀を正眼に構える。


そして右足を前に出し、自然に腰を落とした。視線は真っ直ぐと前を見据え、広く視界を持つ。


――忍と侍の構えが融合しているようだ。どの流派の構えとも言えない、不安定で違和感が付きまとう。


目の前には、寸分違わず同じ構えをした山崎が立っていた。それを見た光は、唇に人知れず笑みが零れてしまう。


昔に帰ったように対峙する両者。ただ一つ大きく違うとすれば、この場に先生が居ないことだ。


「集中しろ」


一瞬で思考が戻る。感情が籠もっていない冷たい声音だ。背中に冷や水を被せられたように、ぞくりと悪寒がした。


これが山崎の仕事時。


(圧されるな……!)