「分からないんですか? 土方さんですよ! 全くあの人は……厳しい事ばかりいいますけど、本当は優しいんですよ?」


呆れと照れが混ざり合ったような沖田の口調だったが、浮かべているその表情は、限りなく優しいものだった。


それは、沖田がいかに土方を慕っているかということが窺える。だが、自分の言ったことが恥ずかしくなったのか、沖田は誤魔化すように悪戯な顔をした。


「……鬼って言う人もいますけどね」


「――“優しい鬼”……ですか」


頭の中にフッと浮かび上がってきた言葉を、光は思うがままに小さく呟く。すると、それを聞いた沖田は、目を見開いた後、堪えきれないように噴き出した。


「あはは、いい表現ですね! でも、土方さん本人に鬼なんて言ったら……刺されちゃいますよ?」


“優しい鬼”か。鬼のような厳しさの中にも、慈愛に満ちた優しい心が存在しているということである。


――まるで先生のようだ。


今は亡き敬慕する師を思い出した光は、少し切ないような気分になり、土方と師を代わる代わる頭の中に思い浮かべた。


思い返せば、土方と先生には重なる点が多い。乱暴な言葉遣いや、無愛想な表情。それでいて、沖田によれば不器用な優しさを持っているらしい。


おまけに、美男子な顔もそっくりだ。