「チッ……」
小さな舌打ちをした光は、首を振って脳裏に過ぎる紅い残像を振り切る。
込み上げる激情で張り裂けそうな胸を抑え、常人には見えない程の速さで屯所へと跳ぶ。
――無性に彼の顔を見たくなった。
優しく微笑んでくれる彼の元へ、疾く速く。
そして屯所へと着くと、隊士の目も気にせず、まっしぐらに部屋へと駆け込んだ。
襖を開けるが部屋は灯りが点いていない。つまりは、誰も居なかったのだ。
馬鹿馬鹿しくなって力が抜けてしまい、光はその場にしゃがみ込んでしまった。
すると、急に心臓がズキ……と抉るような痛みが襲い、光は胸を押さえる。
「――――……」