「佐々木くんじゃなくて、陸って呼んでよ。他人みたいに呼ばないで星奈。寂しいじゃん…。」
一瞬だけ見えた、笑顔の裏の寂しい顔。
なんでそんな顔するの?
あれ…?
これと似たような経験、どっかで…
キーンコーンカーンコーン
ホームルームが始まるチャイムが鳴ってしまった。
でも、それどころではなかった。
「ご、ごめんね?陸…くん。チャイムなっちゃったし、教室いこ?何組?」
うまくごまかせない、不器用な自分に失望する。
「…。星奈と同じ7組だよ。」
「え…?」
「僕さあ、星奈のこと好きになっちゃった。」
「…は?」
「よろしく。」
「ひあっ!!」
さっきまで、寂しそうな顔をしていた陸くんは今度は意地悪な笑みを浮かべながら、固まってる私の耳をハムッとかじった。
陸くんて…実はS?
色んなことが起こりすぎて頭がぐるぐるしてる。
「ほら星奈?早くいかないと先生に怒られちゃうよ?」
人にキスしたあげく、耳までかじったのに平然な顔をしている陸くん。
なぜだか、背筋がゾクゾクした。
私が先輩とのラブラブスクールライフをおくる夢を実現するためには、この美少年、「佐々木陸」に関わらない方が良いのだと直感した。
私は陸くんを無視して、教室に走った。
「ちょっ…星奈?待ってよ!!」
私の後をニコニコしながら走る陸くん。
まだ体に甘いにおいが残っている。