しばらく沈黙がつづいて、さりげなく気まずい空気がただよいはじめた。
き、気まずい…。
先にその沈黙を破ったのは美少年だった。
「もうすぐチャイム鳴るよ?戻らなくていいの?」
さっきまでの気まずい空気が嘘のような、気持ちよい笑顔だ。
「あ…。じゃあ私は教室に戻るね?」
中庭にある時計を見ると、あれから結構な時間がたっていた。
「佐々木くんは戻らないの?」
「うん。僕はもう少しここにいるよ。」
「わかった。じゃあバイバイ。」
私は佐々木くんに手をふり、教室に向かって急いだ。
「星奈ちゃん!!」
「へ!?」
いきなり後ろから大声で呼ばれたから、驚いて声裏返っちゃった。
は、恥ずかしい…
振りかえると、佐々木くんが歩いて私の方へ向かってくる。
「ど…どしたの?佐々木くん…?」
佐々木くんが近づいてくる度、はちみつの甘いにおいが強くなっていく。
心臓が破裂しそうなくらいうるさい。
でも、
気づいた時には遅かった。
はちみつのにおいが私を包んで、唇には柔らかい感触。
視界は金色でうめつくされて、まぶしい。
甘いにおいに思わず、トロンとしたが、すぐ我に返った。
私、佐々木くんに…
チュッと音をたて、静かに離れた唇。
私の唇に残る甘い味。
あいた口がふさがらない。