「ヤバイよぅ!!絶対美羽おこってるよねー」
パタパタ走る度に地面に散っていた沢山の桜の花びらが舞った。
高校生という言葉に浮かれてしまったよぅ。
「ごめん美羽!!」
「遅いよ~!!星奈ぁ。」
肩についた桜の花びらをはらいながら、あきれた顔でため息をついた。
渡部美羽(ワタベミウ)
私の小学校からの親友で、私の唯一信じられる人。
「ほらぁ星奈?早くしないと遅刻しちゃうよ?」
いきなり美羽が手を引っ張るから、カバンが肩からずり落ちて手で握ってる状態。
めちゃ辛いよぅ!!
でも、そんな私をお構いなしに美羽は走った。
「美羽!!ちょ…待って!!」
息をきらしながら言うとやっと美羽は止まった。
「星奈!!がんばりなよ?今日から先輩と一緒の高校なんだから!!」
「うん!!先輩の卒業式では言えなかったあの言葉!!今度はキチンと先輩にぶつけるよ!!」
美羽は私の恋を一番応援してくれた人。
先輩に告白はできなかったけど、
先輩の卒業式に言われた一言。
『今までありがとうな。お前がマネージャーでよかったよ。』
そう言いながら、先輩はヒラヒラ舞っている花びらを優しく取って私に差し出した。
『待ってるから。柏木高校で俺は待ってる。また星奈とサッカーしたいんだ。だから、俺は待ってる。』
その言葉を胸に今まで頑張れた。
先輩は私の事を覚えているかな?
私に言った言葉を覚えてるかな?
「星奈?もうすぐ校門に着くよ?」
「う、うん!!行こう美羽!!」
今度は私が美羽の手をつかんで走った。
私の心は不安だらけ。
でも、この1年の間の私の気持ちに嘘はないんだ。
先輩が私の事を忘れていたとしても。
先輩に大事な人がいたとしても。
私はひるむつもりはない。
それほど好きなんだよ。
だから待ってて下さいね!!先輩?
でも、この時はまだ知らなかったんだ。
あの人達のせいでこの思いが揺らぐ事も。
大変な高校生活が始まる事も。
あの、甘い香りと爽やかな香りに包まれる事も。
私は何にも知らなかったんだ。