昔、桜は、大好きな花だった。自分の名前と同じだし、一心同体みたいな。

鮮やかに、華やかに咲き続ける桜は、私の憧れだった。
でも、あまりに惹きつけられて、なんだか怖い。

咲くそばから散っていく桜は、生まれたときが死への始まりである、命に似ているような気がする。
桜に恐れを懐くのは、死と結びついているから、なのかな。

でも、好きのほうが怖いを断然上回っていた。

もう何年もたって、そんな気持ちを忘れてしまっていた。
嬉しいときも、悲しいときも、桜が側にいて、桜を見ても、感情をもてない。
それに、何に対しても無感情になってしまった。

もう、19歳。
いろんな経験をして、いろんなことがあって、結局残ったのは、
桜だった。