パッパン パンパン

テニスコートに響くクラッカーの音。
私は、テニス部のみんなに誕生日を祝ってもらっていた。
「桃子、誕生日おめでとう!」詩を含む同じ学年の子たちが私の前にやってきて袋を私に渡してくる。きっとその袋の中にはみんなが一所懸命、選んでくれたプレゼントが入っている。

「ありがとう~開けてもいい?」私は笑顔でみんなに話しかける。詩が代表してどうぞと言ってくれた。
中身は可愛らしいワンピース。

「可愛い!!」私は袋からワンピースを取り出して自分の体に合わせてみる。
「桃子、かばんがほしいって言ってたでしょ?でも見つけてしまったのよ。運命のワンピースを!」大袈裟に手を広げながらワンピースを買った過程を話してくれる詩。

「桃子にぴったりでしょ?」みんなが私に可愛いよと言いながら拍手している。
「おめでとう、桃子」私はみんなにもう一度微笑みながらお礼を言った。

みんなと喋りながら帰っているともう時計は7時を指していた。
そして心の中では竜二に祝ってもらえなかった寂しさ。
今日、彼は学校にさえ来ていなかった。どうせ私の誕生日なんかとっくの前に忘れているだろう。
期待したところで落ち込むのは自分だと分かっていたのだけど、でもやっぱり少し期待していた自分がいた。

竜二と付き合ったあの思い出の公園。彼の笑顔を知ってしまったあの公園。その公園を見るとまた虚しくなって寂しくなる。