みんな心から私たちを応援してくれた。
週刊誌にあんなこと書かれた時だって
私たちの味方をしてくれた、
前以上に応援してくれた。


そんな噂を蹴散らすくらいに
私たちを応援してくれたんや。


それなのに私たちは・・・

その想いに応えることもしないで
解散の道しか選べなかった・・・




それでも、そんな私たちでも、
『いいよ』って、言ってくれたみんな・・・
わかってくれたみんな・・・



そんなみんが今、
私たちの復活を願ってる、
期待してくれてる、


それやのに私は、何もしないで
みんなの期待に背を向けてる・・・

あんなに助けてくれてた
みんなの想いに背を向けてる・・・



私はみんなの・・・

その気持ちには応えられない・・・


私の中で罪悪感は大きく広がって行く。






なんともいえない感情が罪悪感が
結衣の心の中を掻き乱す。


もう自分の中では整理できない。


みんなごめん・・・



いろんなことがあった過去、
結衣たちには本当に辛い日々だった。
しかしその分、支えてくれる
ファンのみんなもいた。
だから辛くてもやってこれたんだ。


そのみんなの気持ちに応えたい。
けど、あの世界には帰りたくない。


そして今、やっと普通の生活も手にした、
彼氏もできた。
何も気にせず堂々と街を歩ける。
結衣にとっては憧れていた毎日を
今は過ごしているんだ。
それも失いたくない。



結衣の心の中はぐちゃぐちゃだったんだ。



そんな結衣には雅宏の胸の中は
全てのことから許されたような、
痛みを和らげてくれるような
そんなぬくもりを感じていたんだ。





「結衣、これだけは憶えといて?」


「んんっ!?」


結衣は視線を雅宏に向けた。



「どんなことがあっても、
俺はおまえのことが好きや。
この気持ちは変わらへん。」


「雅宏・・・?」


「これだけは憶えといて。」


雅宏はそう言ってニコッと微笑んだ。


「うん・・・」


結衣はまた雅宏の胸に顔を埋めた。



雅宏の中で、この先もし何があっても
結衣のやることを受け入れる。


今の言葉は、
その意志を表す言葉だったんだ。


この先もし、結衣がKANZASHIを
復活させたいと言ったとしても・・・



そして、年は明けて
新しい年を迎えた。


正月休み、私たちは
初音の家に集まっていた。




「さて、ひと休みしますか?」


「うん。」


新年そうそう演奏をし、
みんな上機嫌。




初音は冷蔵庫からみんなの
飲み物を持って来る。


「ありがと初音。」


栞はプシューッとビールのフタを開け、
ゴクゴクと喉を鳴らして飲む。



「あれ? 結衣飲まんのか?」


いつもなら栞に負けじと
ゴクゴクと炭酸を飲む結衣が
フタも開けずに考え込んでいる。


栞はそんな結衣を不思議そうに見た。




「えっ!? ああ・・・」


「結衣、どうかしたん?」


初音が心配そうに顔を覗き込む。



「えっ!? いや・・・」


「彼氏とケンカでもしたんか?」


栞がちょっと悪戯な感じで聞く。



「いや、そうじゃない・・・」


いつもの結衣なら栞に突っかかって行くのに
今日の結衣は何か違う。



「結衣? 何があったん?」


「・・・・・」


「結衣?」


みんなが結衣をじっと見つめた。



「この前・・・
てっちゃんに会った・・・」


「てっちゃん?」


「てっちゃんって、鉄成のことか?」


「うん・・・」


「へぇ~珍しいなぁ~
こっち帰って来てたん?
ライブかなんかか?」


「ううん・・・
私に会いに来た。」


「結衣に?」


「うん。」


「なんでてっちゃんが結衣に?」


「・・・・・」


みんな不思議そうに結衣を見る。


「KANZASHI・・・
復活せーへんか?って・・・」


「えっ!?」


三人の動きが一瞬止まった。



「KANZASHIを復活・・・?」


麻帆が驚いたように目を見開いた。


「うん・・・」


「てっちゃんが・・・?」


「で、結衣は、なんて答えたん?」


麻帆が身を乗り出し聞いてきた。



「無理やって・・・言った・・・」


私がそう言った瞬間、
みんな肩がガックリと
落ちたように見えた。




「そうか・・・」


身を乗り出していた麻帆は
ガックリと椅子に腰を下ろした。



「でも突然そんなこと言うなんて、
なんでやろうね?」


「私と、麻帆のライブを観たらしい・・・
YouTubuにも流れてるって・・・」


「そうなん!?」


「麻帆、結衣とライブやったん?」


栞はライブをしたことに
驚いているようだ。



「うん、ウチのボーカルが
突然辞めてなぁ・・・
結衣に頼んだんよ。」


「そうやったんや・・・」


「結衣、ホンマにやる気ないん?」


「えっ!?」


「KANZASHI復活する気ないん?」


「・・・・・」


「私、あれから考えたんやけど、
私はやっぱりやりたい。
みんなとまた歌いたい、
あのステージにもう一度上がりたい。」


「麻帆・・・」


「またいろんな嫌なこと
あるかもしれんけど、
今なら乗り越えられるような気がする。」


「・・・・・」


「私たちだってあの頃とは違うやろ?
だいぶ大人になったやろ?
それに、私たちには心強い
ファンのみんながおるやん!!」


ファンのみんな・・・


私は胸がズキンっと痛んだ。