「送って行くから帰れ。お母さん心配するぞ」


『本気で言ってるの?大丈夫、今日もあの人は帰ってこないから』



あたしは努めて明るく言う。



「工藤……」


『夕飯を食べる相手がいない可哀そうな生徒に付き合ってくれてもバチは当たらないでしょ?』



言葉の続きを呑んだ成瀬先生にそう言うと


薄暗くなり掛けた交差点の波に、彼を引っ張りこんだ―…。