あまり触れてはいけないことだったかと思い「ゴメン」と言うと「もう昔のことだから」と笑った。


「行きたい美大があって上京したけど、それ以上に誰も自分を知らない所で一から始めたいって思ってたの。

場所を変えようが変えまいが、変わろうって思うその気持ちが大事なのにね」


『そうだったんだ。…で?こっち来てどうだった?』


「始めはみんなに合わせなきゃって必至だったの。以前みたいにみんなの輪に入れないんじゃかって不安で。

でもある時友達に言われたの」


『なんて?』


「繕ってばっかりで疲れないって?全部お見通しだったみたい」



当時の自分を思い出しているかのように遠い目を見せた。