「あのね、恋には駆け引きが必要なの。いつも押して押して押しまくってた紗希が突然ひいたら、アレッてなるじゃない。押し倒せないなら、逆の一手よ!」


『よく分かんない』


「もーっ!紗希は素直すぎるの」


『よく言われる』





あの誕生日から数ヵ月後、高校生になったあたしは葉南台(ヨウナンダイ)高校の制服を着ていた。



最後に聞いた言葉通り、確かに成瀬先生は葉南台高校で数学の教師をしていた。



あの時成瀬先生があんなところにいたのは、見回りをしていたから。



クリスマス目前という浮足立った時期に、高校の先生達が当番制で行っていたという。




補導というのも、あながち嘘でなかった。