「久しぶり。ごめんなー、彩志くん。お姉ちゃん借りてて。」



申し訳なさそうに、だけど自信満々の笑顔を向けたのは光一社長。



光一社長はこのあたりでも有名なホストクラブで社長をつとめている権力者。



長身でガタイも良くワイルドな見た目だが穏やかな性格でオーラがすごい。



「いつも彩志が光一社長から美桜さんをお借りしてるんですよ。」



夏希さんが光一社長を持ち上げる。



美桜は光一社長の膝に手を置いて笑っている。



左手の薬指に輝いているのはカルティエの指輪だ。



またおねだりしたんだろうと苦笑いになってしまう。



美桜はしたたかな女だ。



「お手洗い行ってきますね。」と光一社長にささやく美桜。



「飲み過ぎた?大丈夫か?彩志くん。美桜をお手洗いまで。」



言われなくても連れてくわ!と心のなかで悪態をついてしまう俺はまだまだ小さい男だ。



だいたい美桜はこのくらいの酒では全く酔わない。



ただの化粧直しだ。