[ごめん、もう帰るね。] [ちょっと待ってーや。] そう言って八城くんは傘を持っていない 方の手で、あたしの腕を掴んできた。 ‥‥本当もう、何なの。 [傘あげる。] [は‥‥?] [だから、傘あげるいうとるやろ? 風邪でもひかれたら困るからな。 じゃあまた来週ー。] 無理矢理あたしの手に握らされた傘を さしながら八城くんの背中を 見送る。 (嫌い、だって言ったくせに。) 曖昧なその態度が一番苦しいのよ。