――と、静まり返ったフロアーが、急に慌ただしく動きだした。



ガチャッと開けられた治療室の扉。



そこには、足をコルセットのような白い塊に覆われ、車椅子に乗った郁人の姿があった。 



私を見つけるや否や、



「奈緒……悪りぃな。
みっともねぇな、俺。事故っちった。ごめんな…」



苦笑いを浮かべながら、頭を掻く仕草をする郁人。 


首を何度も横に振り、振り絞るように声を出した。



「郁人…ごめんね。私のせいで…本当にごめんなさい」


「バ〜カ!何言ってんだよ。俺が勝手に事故ったんだから、奈緒は気にしなくていいんだよ。分かったか?」 


「郁人……」



郁人の優しさや気遣いが胸に迫るようで、気を抜いたら、涙が込み上げてきそうになり、唇を噛み締め、ぐっと堪えた。