――ガタッ。


急に立ち上がったかと思ったら、隼人は待合室の奥にある自動販売機から飲み物を買ってきた。


「コーヒーでいいか?」


「うん」


差し出されたホットコーヒーを受け取り、隼人の顔を見据えた。


固く閉ざした口が、ようやく開いた。 


「今日、俺のとこに来たんだよ、あいつ」


「えっ?」


思いがけない話に、心が動揺する。 


「な、んで?」


驚きで、上手く言葉が話せない。


「奈緒のことだよ。もう泣かすなってさ!あいつに説教されたよ」


コーヒーをズズズズ…と音を立てながら飲んだ隼人は、一息ついた。   


「俺では、奈緒のことを悲しませるだけだから早く手を引けってさ!あのバカ、兄貴の俺に食って掛かってきたよ」


「………」


ポケットからタバコを取り出し、吸おうとするも……ここは、院内。喫煙所に行かなければならない。 



「ちぇっ」と、軽く舌打ちした隼人は、抜き出したタバコを面倒臭そうにまた元に戻した。