強盗さんは銃口を私に向け、ジッと見た。



ゴクリと唾を飲み込むと、私は鳴り続けるケータイの通話ボタンを押し電話に出た。



「…も もしもし…っ」



『もしもし、相沢さんのお電話で間違いないですか?』



店長さんの声だ。

中年の…おじさん?おじいさん?で、エプロン姿のよく似合う優しそうな人だったな。



「あ、はい。相沢です。
おはようございます…」



『おはようございます。
相沢さん、今日から来てもらう筈だったと思うのですが…どうしたんですか?』



「す すみません店長っ
あの 私…っ、ゴホッゴホッ
昨夜から急に熱が出ちゃって頭もクラクラして…っ
あ…」



よくもまぁ咄嗟にこんな大ウソがつけるなと自分でも思った。

私もしかしたら詐欺師になれるかも?



『そりゃいけないな。
大丈夫かね?よく休まないと』



「ゴホッゴホッ
すみません。しばらく寝たら治ると思うので…。
…はい。…はい。
はい、治ったらまた連絡しますので。
…はい、すみません。ご迷惑おかけします…。
それじゃあ…」



…そう言って私は電話を切った。



チラッと強盗さんの顔を見ると、うんうんと頷きながら口角を上げていた。



とりあえず合格って事ね…。