強盗さんは銃口を私に向けたまま、ゆっくり立ち上がり近付いてきた。



「待って!殺さないで!
違うの、あの…っ
ト トイレに行きたくなって、それで…!」



一か八かの大ウソだった。

どうせ殺されるなら、まだ騙されてくれるかもしれないウソをついた方がマシ。


お願い、上手く騙されて…!




「…その電話、誰からなだ?」



「えっ」



「今誰からかかってきてんのかって訊いてんだ!」



私の手に持つケータイは、今尚鳴り続けている。


私は着信にチカチカ光るケータイを開いて中を確認した。


そこに書いてあった名前は…



「店長さん…!」



「店長?」



ケータイ画面の隅を見ると、時計の表示が8時半を過ぎていた。


本来なら、今日から本屋さんに出勤する筈だった。
その時間が、8時半なのだ。