目の前ですやすやと眠ってる強盗さんの前まで行こうと思い立ち上がろうとすると、何かに足を引っ張られ態勢を崩した。


「わっ」



毛布の上に転んだから大きな音はたてずにすんだし、たいして痛くもなかった。



私、一体何に足を引っ掛けたの…?



「…あ、そっか」



昨日強盗さんに足首をロープで巻かれた事、すっかり忘れていた。


手が使えないのも不便だけど、足がきかないのもやっぱり不便。

いや、手よりはずっとマシ…かな?。



私は膝と手で四つん這いになりながら強盗さんの所までズリズリと這った。





うつむく顔を下から覗き込んで見る。



「………………」



犯罪を犯したのだ、私以上に緊張や疲れはあったと思う。


顔は汗や砂で汚れ、無精ひげも生えていた。



だけど…眠ってる顔、優しい感じ。


昨日も思ったけど、この強盗さんは悪そうには見えない。


でもそれはあくまでも人相なだけであって、間違いなく銀行強盗犯ではあるんだよね…。