ラジールは私の嘘を見抜いたに違いない。でもこういう時、私が決して後に引かないことも知っている。彼は黙って自分のマントを脱いで私を包み、ちょうど腰掛けるのに都合よく伸びた低い木の枝の上に、私を座らせた。

「ね、今度捕まったのって、どんな生き物?」
ラジールは一瞬、ためらうように私を見た。
「……髪は月光を集めたような銀色、瞳は空の青、サージュの樹の精とも言われる、幻の生き物です」
「えっ、あの、太古の血を持つ? じゃあ、ラジールと同じように、人間の姿をしているの?」
「ええ、そうですよ、姫」

私は考え込んだ。ラジールは私たちとは違う、太古の血を持つ生物だ。人間ではない。でも、私には、人間と変わらないように見える。父様や、臣下の者たちはそうは思わないのかしら。

私は彼を見上げた。
「ラジール……、その生き物も、標本にするの?」
「王はそうお望みです」
彼は静かに答えた。ラジールの黒い瞳が、底無しの井戸みたいに見える。私はちょっと震えた。

「かわいそうだわ……。どうして、生きたままでお城に飼っちゃいけないの?」
ラジールはかすかに微笑んだ。彼の笑顔がいつもどこか悲しげなのは、なぜなのかしら。

「生きていても、価値がないからだそうですよ。あなたのお父様がおっしゃるには……。生きた生物は、逃げたり、人間を傷つけたりする。だから標本にした方が、扱いやすいのだそうです」

「でも……」
言葉が見つからなくて、私は黙った。父様の標本室を、見たことがあるわ。きれいな生き物が、たくさん標本になって飾られていた。

私はなんだか悲しかった。きっとあの生き物たちは、生きて動いていた時の方が、ずっとずっと、きれいだったと思う。動物たちの動かない瞳に見つめられて、私は怖くなった。

人間と同じ姿をした生き物の標本は、まだ見たことがないけれど……。その瞳に見つめられたら、どんな気がするだろう。

「その生き物は、人間の言葉がわかる? ラジールみたいに、言葉を話せたら、殺されずに済むかも知れないわ。太古の血を持つ生き物は、太古の力をあやつる術を知っているのでしょう?」