何? これ……

私はあっけにとられて、まわりを見回した。
だってどう見ても、ここは私の家では、ない。

壁も床も石造りで、いつかテレビで見た、中世ヨーロッパのお城の中の一室って感じ。でもそれにしては、ガランとして殺風景な部屋。調度らしい物も何もない。

目の前には、これまた昔の西洋風の服を着た男が一人立っていて、私を見下ろしている。

「こ、ここ、どこ? あなた誰? 私、なんでこんなとこにいるの?」

硬い床の上から、あわてて起き上がりながら尋ねた。

「……陛下、こちらも気づいたようです」

20代半ばと見えるその男は、私の質問を無視して言った。長い黒髪を、後ろで一つに束ねている。

「そうか。どれ」

向こう側にいたもう一人の男が、こちらを向いて近付いてきた。

……わっ、何この人、髪がすごい紫色〜! 染めたのかしら? でもいやに肌の色も白いし、外国人っていうより、もっと異質な感じ……。顔つきはなんだか陰険そう。歳は、40? 50?

それにしても、なんて趣味の悪い恰好! 黒髪の男と同様、こちらも中世風の長い貫頭衣に、マントという姿。

それはいいとして、色が……なんとも、ド派手! 細かい模様の中には赤・黄・青・そして緑と、ありとあらゆる色彩がごちゃ混ぜに入っている。おまけに体中、宝石やら黄金やらでゴテゴテ飾りたてていて、歩くたびにジャラジャラ音がする。

おっさんは私をまじまじと眺めて言った。

「ふむ……瞳も黒か。あまり美しいとは言えんな」

「な、何よ、それっ! 悪かったわねっ! だけど美的感覚は、あんたよりましよ!」

頭にきて思わず怒鳴った。なのに二人は全く無視して会話を続ける。

「ではアルコール漬けに? しかし陛下、異世界の人間などめったに手に入るものではありませんよ。珍品としてコレクションに加えられてはいかがです?」

「う〜ん、そうだな……」


え〜〜っ? アルコール漬け? コレクション? ……何? 何言ってるの、こいつら?!