「何をしている!
早く行け!
心に隙のある奴に取り憑いてくるんだ」
堕天使の長は命令口調で叫んだ。
堕天使達はめいめい、飛び立って行った。
日向達は物陰に隠れて、現実界に出て行く堕天使達を見送った。
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三人は堕天使達がたむろっていた広場に降り立った。
広場からは、どこかに続くいくつもの穴が開いていた。
日向は言った。
「月島君、どの穴がどこに繋がるかか分からないのか?」
月島が答えた。
「ここはアリの巣のようになっていて、リリスの部屋とか、人質の部屋とかがあると思うけど、どれがどうなっているかは、迷路で分からないな」
玲子が虫霊を出しながら言った。
「とりあえず、虫霊をたくさん出して、スサノオと月島君のご両親を探してみるわ」
玲子はそれぞれの穴に虫霊を放った。
月島もドラゴンを出して、穴の探索に行かせた。
玲子は月島に言った。
「ねぇ。
月島君、あなたの能力でここが現実世界でどの辺りになるか穴を開けて見れない。
今回ダメでも次からはここから調べればいいでしょう」
「小さい穴を開ければいいけど、穴を開けられるのは、俺だけだから、三人一緒じゃないと困るんじゃあないかな」
玲子はそうねと頷いた。
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玲子の放った虫霊達が戻って来た。
日向が聞いた。
「何か見つけたのか」
玲子は何も無かったと首を振った。
月島のドラゴンが戻って来た。
ドラゴンが報告した。
「スサノオを閉じ込めてある檻を見つけた」
三人はスサノオの奪還に行くことにした。
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三人はドラゴンを先頭にして穴の一つを進んで行った。
一番最後を歩いていた玲子が真ん中を歩いている日向の耳の中に虫霊を入れた。
『日向君、普通にして聞いて!
月島君の様子がおかしいわ。
この道は虫霊で調べた時には何も無かったのに』
『どうするんだ』
『このまま、ついていくしか無いわね』
ドラゴンと月島は広場に出た。
日向と玲子もそれに従った。
広場の穴から、堕天使が出てきた。
日向と玲子の回りの足元が盛り上がって、あっという間に檻になった。
二人は檻に閉じ込められた。
堕天使が月島に言った。
「ドラゴン、よくやった。
母親に会わせてやる」
日向が言った。
「月島。
どうして、こんな奴らの言うことを……」
月島はただ横を向いていた。
「仲間ごっこはここまでだ」
月島は堕天使に連れられて、穴の中に消え去った。
日向と玲子は月島が堕天使の長と消え去った穴を見ていると、堕天使が言った。
「少しは自分達の心配をしたらどうだ」
堕天使は口から糸を吐いた。
二人はかわしていたが、日向が粘った糸に足を取られた。
堕天使は倒れた日向に一気に糸を吐き出して、繭のように包んでしまった。
「次はお前だ」
堕天使は玲子にも糸を吐きかけて繭のようにしてしまった。