玲子が老人に尋ねた。
「日向君の憑き神はどうなるのですか」
老人は言った。
「封印の札を剥がして、また、くっつければいいんじゃ。
あの封印の札は奴らには剥がせないから心配ない」
日向は黙って頷いた。
月島が
「そんなに気を落とすなよ。
俺がいつでも、ゲームの中に連れて行ってやるぜ」
と、言った。
老人が苦笑いしながら言った。
「日向君には、ここで修行をして、もっと霊力を高めないと、また、スサノオが暴走してしまうぞ」
日向は黙って頷いた。
玲子が自分も一緒に修行すると言った。
日向は月島は訊いた。
「お前は敵じゃないのか?」
月島が答えた。
「俺の家族は、リリスに拉致されたのさ。
俺は奴らから傷ついて逃げたところをこの人に助けられたのさ。
とりあえず、今のところはお前たちに手を貸してやるぜ」
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日向、玲子、月島は老人の元で修行を始めた。
薪割り、山登り、川下りなどなど、自然を利用した修行が組まれていた。
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修行が終わると、三人は老人に呼び出しを受けた。
三人が揃うと老人は口を開けて大きく息を吸い、思い切り吐いた。
口から憑き神が出てきた。
九尾だった。
九尾が老人に言った。
「久しぶりだな。
俺に食われる気になったのか」
「そうじゃない。
こいつらの修行を手伝ってもらう」
「いやだね」
「食わせてやるといってもか?」
「それなら、いいぞ」
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老人は三人に向かっていった。
「いよいよ。
最後の試験だ。
この九尾から抜けでてみよ」
老人が合図すると、三人は九尾の口に吸い込まれた。
老人はそれを見届けて、穏やかな顔で笑った。
九尾が言った。
「じじい、久しぶりだな。
見込みがある奴らなのか?
この試験に通ったのは、お前くらいだったな」
老人が言った。
「ここから離れてくれ」
「どういうことだ」
「久しぶりに洋魔と一戦しないとな。
終わるまで預けておく、早く行け」
九尾は老人を振り返りながらその場を去った。
黒い雲が近づいてきた。
堕天使の群れだった。
二、三十匹の一団になっていた。
老人は堕天使を迎え撃った。
お札を投げて堕天使に張ると爆発した。
しかし、数に勝る堕天使は老人の隙をついて、背中に傷を負わせた。
老人は呪縛の札で堕天使を縛ると自爆した。
堕天使はほとんどやっつけられた。
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三人は九尾に吸い込まれた。
壁がドロドロした穴に入った。
「胃の中みたいだなぁ」
足元の川には白骨のドクロが浮かんでいた。
月島が少しイラついて、
「どうやって脱出すればいいんだ?」
「このまま、進んで行けば、出られるんじゃないか。
ウンコになって」
玲子がいやな顔をした。
「汚い」
足元がぶよぶよした中を進んで行くと、前が盛り上がってきた。
盛り上がると人の形になった。
若い男だった。
「人に会うのは久しぶりだな。
ここは迷路だからそう簡単に抜けられないぞ」
日向が言った。
「お前は何者だ」
「管理人かな。
九尾の変化の一つだ。
早くここから抜け出さないとああなるぜ」
若者は白骨化したドクロを指差した。
若者は地面に手をついて、何かブツブツ言った。
三人は見ていたが、突然、それぞれの足元に穴が開いた。
三人はそれぞれその穴に落ちていった。