日向がボタンを押すと同時に携帯の画面が眩しく光った。
日向は目をつむり、携帯から手を離した。
恐る恐る目を開けると、地面に携帯が転がっていた。
携帯を拾い上げると、画面はあのゲームのものになっていた。
昼休みの終わりのチャイムが鳴ったので、携帯をしまって教室に急いで戻った。
教室は他の生徒も戻って来ている最中だった。
日向は前を見た。
ある女子のところで目が止まった。
その女子の体の周りに黒い小さな虫のような物が群がっていた。
彼は前の席の男子に聞いた。
「鹿島のあたりに虫が群がっているな」
前の席の男子は、答えた。
「何、言っているんだ。
鹿島さんの周りに、虫なんかいないよ」
どうやら、彼には見えてないらしい。
見ていると、虫が飛んできて、彼の耳の中に入った。
日向は耳から虫を出そうとした。
先生が言った。
「日向。
さっきから、落ち着きがないぞ。
しっかりしろ」
日向は照れ隠しに頭を掻いた。
突然、日向の頭の中で声がした。
「日向君。
学校が終わったら、私の家に来て。
神社だからね」
日向が鹿島を見ると彼女も日向に視線を送っていた。
日向は何が起きているかが分からなかったが、とりあえず神社に行こうと思った。
日向は学校が終わると、鹿島の家の神社に行った。
鳥居をくぐり抜けて、賽銭箱の前に座った。
間もなく、鹿島玲子が現れた。
鹿島玲子の周りには小さな虫の群れが舞っていた。
「日向君。
あなた、神が憑いているよね」
「えっ」
「私の憑き神が見えるでしょう」
「その黒い小さなやつなのか」
「私の憑き神は虫霊なの。
虫霊を使って、連絡を取ったり、情報収集ができるのよ。
日向君の憑き神は何なの?」
「スサノオだけど」
「スサノオですって!
凄いじゃない。
っていうか。
あれはゲームじゃなくて、現実なのよ」
「どういうこと?」
玲子が答えた。
「あのゲームは、日本の神々と外国の悪魔の闘いなの。
ゲームには神社関係者しか参加できないはずなんだけど。
パスワードがあったでしょ」
「いいや」
「おかしいわね?
家は神社関係者なのかしら」
「遠い親戚にはいたみたいけど」
「とにかく、スサノオが憑いてしまったから、いまさらどうしようも無いわね」
「これからどうなるんだ?」
「リリスと言う悪魔と闘うことになるわ。
奴らは日本の神を追い出して、支配しようとしているのよ。
最後には日本人みんなに悪魔を取り憑かせて帝国を造るのが目的なのよ」
玲子が力強く言った。
「早く仲間を見つけて奴らの野望を打ち砕くのよ」
「どうやって、見つけるんだ?」
「簡単よ。
憑き神に憑かれた人は憑き神が見えるのよ。
そんな人を探せばいいわ」
「一体、何人ぐらい憑き神がいるんだ?
八万の神だから、沢山いるんだろう」
「いいえ。
憑き神に憑かれた人は、リリスに片っ端からやられているから」
「じゃあ、そのうちリリスが襲って来るのか?」
「そう、だから、早く仲間が必要なの」
玲子は付け加えた。
「もう一つは、憑き神を使いこなすこと。
憑き神を使いこなせば、リリスに対抗できるはずなの。
それができないからやられてしまっているのよ」
「それはゲームと関係してないのか。
アイテムを探せば何とかなるんじゃない」
「じゃあ。
携帯でゲームを出してみて」
日向は携帯を取り出して、ダウンロードしたゲームを出した。
「どう!?
ゲームは見つかった?」
「うん。
アイテムを探してみる」
日向はゲームを色々いじってみた。
「どう。
地図が出てくるだけでしょう。
あなたと私が地図に表示されてよね。
表示範囲は3キロまで拡大できるから、その中に憑き神が入れば、画面上に出るから仲間を集めに使えるわ。
でも、自分の憑き神のレベルアップは自分でやるのよ」
日向は尋ねた。
「どっちが大変なんだ」
「憑き神のレベルアップが先ね。
ダダでさえ携帯で見つけられるから、憑き神を小さくしてなるべく敵に見つかり難くして。
見てて」
玲子は虫霊達を体内に入れていった。
玲子は普通の人と同じようになった。
「日向君もやってみて、憑き神を意識で体内に入れるのよ」
日向はスサノオが小さく成るように意識した。
スサノオは前よりも少し小さくなった。
「なかなかいいわね。
それが出来るようになったら、憑き神を実体化するの。
見てて」
玲子が虫霊を集めて、紐のようにして木の枝に巻きつけるとその紐を使い体を浮かせて見せた。
「私の虫霊はこんな使い方しかできないけど、スサノオは最強の神だから、もっと凄いと思うの。
頑張ってね」