辺りは公園の景色に戻った。
日向と玲子の前にはドラゴン使いの少年が倒れていた。
玲子は日向に少年を神社におぶって連れていかせた。
少年が目を覚ました。
日向は少年に訊いた。
「妹をさらって何を企んでいる?」
「オレは知らない。
オレはあいつ等から、憑き神を紹介して貰っただけだ。
あんたらを倒せば自分の憑き神がレベルアップできるからな」
「本当か」
「これはそういうゲームじゃないのか」
「それは違うわ。
西洋の悪魔と日本の神の闘いよ。
日本の神が負ければ日本は西洋の悪魔に支配されるのよ」
玲子が説明した。
少年は少し驚いていた。
「あなた。
私達の仲間にならない。
私は、虫霊使いの玲子。
こっちは、スサノオの日向君よ」
「オレは月島。
憑き神はドラゴンさ。
助けてくれたことには礼を言うけど、仲間にはならないぜ」
月島はそう言うと部屋を出て行こうとした。
日向が月島に言った。
「待てよ。
強くなって何がしたいんだ。
何か、隠してないか?」
「お前らには関係ない事だ。
関わらないでくれ」
そう言うと月島はドラゴンに乗って去った。
次の朝
日向はいつものように朝食に階段を降りていった。
妹の事を両親にどう説明したらいいか悩んだ。
食卓には妹の席は無かった。
「妹の分は?」
恐る恐る訊いた。
両親は怪訝そうな顔をした。
「何言っているの?
妹が欲しいの?」
母の顔が赤らんだ。
『記憶が消されている』と思った。
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学校
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日向は学校で玲子に今朝の事を話した。
玲子はそれが奴らのやり方で、関係者の記憶を消して、後を残さないからなかなか足取りがつかめないと困っていた。
今までも、学校から何人か居なくなっているようだが、誰も騒がないそうだ。
日向は玲子に訊いた。
「なあ、昨日、なんで月島を仲間に誘ったんだ?」
「日向君。
昨日、月島君を仲間に誘ったのにはもう一つの理由があるのよ。
彼は最初にバトルフィールドを呼び出したでしょう。
もしかしたら、彼はゲームの中と現実世界を行き来できると思うの。
それができれば、妹さんの救出もできるし、リリスを見つけることができるわ」
「それじゃ、今まではどうやって洋魔と闘っていたんだ?」
「闘う?
私の虫霊は情報収集とかには良いけど、戦いには向かないから、敵が近づいたら隠れていたんだよ。
携帯を見てみて」
日向が携帯にゲームの画面を出した。
画面には日向と玲子のキャラが出てなかった。
「これで、分かったでしょう。
このゲームにはキャラを消せる場所があるのよ。
私はそんな場所を探してそこに居たのよ」
日向は玲子がいつも同じ場所にいるのに納得した。
玲子が窓の外を指差した。
「敵が来たわよ」
窓ガラス越しに、コウモリの羽を持った堕天使が近づいて来るのが見えた。
何かを探すようにしているが、玲子達には気付かないようだ。
「悲しいけどこれが現実なの。
スサノオもゲームの中なら強いけど、現実世界では、日向君の霊力コントロールがいまいちだから闘うのは…」
玲子が浮かない顔で言った。