堕天使が月島に言った。
「ドラゴン、よくやった。
母親に会わせてやる」
日向が言った。
「月島。
どうして、こんな奴らの言うことを……」
月島はただ横を向いていた。
「仲間ごっこはここまでだ」
月島は堕天使に連れられて、穴の中に消え去った。
日向と玲子は月島が堕天使の長と消え去った穴を見ていると、堕天使が言った。
「少しは自分達の心配をしたらどうだ」
堕天使は口から糸を吐いた。
二人はかわしていたが、日向が粘った糸に足を取られた。
堕天使は倒れた日向に一気に糸を吐き出して、繭のように包んでしまった。
「次はお前だ」
堕天使は玲子にも糸を吐きかけて繭のようにしてしまった。
ーーーーーーーー
月島は堕天使の長と穴の奥へと進んだ。
穴が終わり、広場に出た。
広場には樹の幹があった。
樹の幹には、人の顔が浮き出ていた。
月島は浮き出た顔の中に母親を見つけた。
「ドラゴン、母が見つかったようだな?」
「母さんを返してくれ」
「ダメだ。
リリス様の復活にはもっと、霊気が必要だ。
今は返せないな」
堕天使の長は言い放った。
月島は懇願した。
「返してくれ」
堕天使の長は少し考えて答えた。
「そうだな。
スサノオを捕まえてくれば考えてやる。
あれの霊気があればリリス様の復活は直ぐだ」
月島は言った。
「分かった。
スサノオを捕まえてくればいいんだな」
月島はスサノオを探しに出た。
ーーーーーーーー
日向と玲子の繭が樹のある広場に運ばれてきた。
堕天使の長が言った。
「よくやった。
樹の根元の穴に入れてやれ」
部下は樹の根元の穴に繭を放り込んだ。
繭の中の日向は穴に落ちていった。
穴の中に落ちながら、繭が柔らかくなっていった。
触手のような物が繭を包んで、溶かしていった。
いつしか、触手は繭を吸収して、日向の体全体を包み込んだ。
日向は体から霊気が吸い取られてゆくのを感じて、そうされないように意識した。
体が筒のような所を通り抜けて、壁から顔が出た。
目を開けると、堕天使の長がいた。
下や上を見ると、樹の幹の途中に出たようだった。
「出てきたぞ。
リリス様の栄養分になってしまえ」
堕天使の長が笑いながら言った。
日向が周りを見ると、霊気を吸い取られている人の顔が沢山出ていた。
堕天使の長は部下に命令していた。
「ドラゴンがスサノオを捕まえて来たらあの穴に放り込んでおけ。
後はこの樹が霊気を吸い取って、リリス様の実に送ってくれるはずだ。
そうすれば、リリス様が復活するのだ」
堕天使は別の通路の穴に入っていった。
部下の堕天使達は無駄話に夢中になっていた。
日向は隣の婦人に話しかけた。
「おばさん」
何度か呼びかけると婦人が日向の方を向いた。
「おばさん。
もうすぐ助けてやるから頑張れ」
婦人は頷いた。
「まだ、若いのに大変なことに」
「おばさん。
15、6才ぐらいの女の子を知らないか?
俺の妹なんだ」