「いいんですか?」
バックミラーから驚いたような声がした

少しずつ

車のスピードが遅くなった




「いいです」

だめ

だめ

ここで止まったら手術に前向きになれなくなる気がするから




ギュンッ

っと車のスピードが上がった



いいんだ

これでいいんだ




公園が過ぎて行く
それと共に
公園の近くにあった
優くんの家も
わたしの家も

通り過ぎて行った


いいんだよ・・・ね


『花音ちゃん』
その声で呼んでほしい

『笑った方が可愛いよ』
褒めてほしい

『どうしたの?』
私の家に心配してくれる人なんて全然いなかった


さっきの涙がまだ残っていたのか
また溢れてきた


コツン
窓ガラスに頭をぶつける



ほんとは
止まりたかった
過去を振り返りたかった





でも
私は進むんだ
手術に前向きになるんだ
生きるんだ