俺たちが病室に駆けつけたときには、夜佐神は白色のベッドの上で眠っていた。
病室内にはすでに大野と、青白い白衣を身にまとったこの病院の医師が俺たちを待っていた。
「綾乃!!」
夜佐神の状況を見るなり、香川が慌てて夜佐神の眠るベッドに駆け寄った。
夜佐神の体には見慣れた点滴がついており、口には呼吸困難を抑える薄緑のマスクがつけられていて、とても様態が言いようには見えない。
「夜佐神……」
俺の横に並んだ木下が力のない声で呟いた。
「先生!綾乃は…綾乃はどうなってるんですか!?」
香川の必死の形相で問い詰められたら医師は、少し顔をうつむかせて説明し始めた。
「彼女が病院に運ばれてきたときには、すでに急性心不全状態でした…。すぐに処置にかかり、なんとか一命は取り留めましたが、急激なアルコール摂取により、肝臓等のからだの数カ所が弱まっていて、いつ様態が急変してもおかしくありません。」
医師の丁寧な説明に、俺は未だに入り口で立ち尽くしたまま、ただ聞き続けた。
「意識もいつ戻るか、未だ見当もつきません。しかも、彼女はまだ非常に若く、急性アルコール中毒の症状が残る可能性も否定できません。私たちも全霊を注いで処置に当たりますが、心の準備はしておいてください……」