それでも、
「よかったわね。」
偶然か、沙織が私の心のセリフに繋げるようにぽつりと言った。
その言葉に首を傾げていると、沙織は安心したような笑みを浮かべて、
「柴田君が引き受けてくれて。」
「え、あ、…うん。」
コクリと頷く。沙織も柴田君が引き受けてくれるか心配してくれてたんだ。
やっぱり沙織はやさ−−−
「やっぱり愛の力は侮れないわね。」
「侮るもなにも、愛の力なんて私にはないから！」
よく見ると沙織の笑みは安堵の笑みではなく、意地悪そうな笑みを浮かべていた。
なんか悔しい。
すると、急に真面目な顔つきになった沙織が、急に立ち止まり、
「綾乃、愛って言うのはね、別に恥ずかしいことじゃないの。
自分の愛を否定することの方が、よっぽど恥ずかしいのよ！」
「めんどくさっ！今日の沙織いつもに増してめんどくさっ！
別に沙織は愛を熱く語るようなキャラじゃないでしょ！」
よくよく考えれば、確かに沙織の言ってることは正しいかもしれないけど、何でだろう。
心にぜんぜん響かないのは。
