と、そんなことを考えてる俺を、香川が少し冷たい目で見てきた。



「綾乃を傷つけたから、嫌でも講師引き受けてもらうからね。」

「は!?」


思わず高い声を上げてしまった。
この言葉に驚いたのは俺だけではなく、夜佐神も同様にビックリしていた。


イヤイヤ待てと。


夜佐神を傷つけた?


俺が?


「俺が夜佐神を傷つけただ?」

素直な疑問を香川に問いかけるが、


「そう。」


香川は当然のようにコクりと頷いた。

全く思い当たる節がない。
今までの夜佐神とのやり取りの中で、夜佐神が傷つくようなシーンがあったのか?

別に夜佐神が傷つこうがどうしようか普段の俺なら気にもしないのだが、心当たりがないと逆に気になってしまう。


と俺が頭を悩ませていると、香川がいつもの優しげな表情と打って変わり、かなり真剣な表情を俺に向けた。


「柴田君。綾乃はね、みんなの柴田君に対するイメージを無くすために、こんなに必死になってお願いしてるの。
柴田君にとってはくだらないことかもしれない。けどね、綾乃は、今のままじゃ高校生活を台無しにしちゃうと思って、柴田君の為を思って言ってるんだよ?」

「あ、あの、沙織さん?」

いきなり暑く語り始めた香川に、夜佐神が一滴汗を垂らしながら声をかけるが、香川は夜佐神の呼びかけに耳を向けずに、俺に語ってくる。