すると、今までの状況を石化しつつも観察していたらしい木下が、急に動き出したかと思うと、俺の方に尊敬のまなざしを向け、

「リヒト、俺はお前を本当にうらやましいと思うぞ。」

「それは俺がまともな人間だからか?」

「なんだそのまるで俺が薄汚れた人間みたいな言い方は!」

スッ

木下が必死に反論すると、その衝撃で七日、木下のポケットから一枚の紙切れが、俺の足下に落ちた。

「?」

地面に落ちたその紙切れを見てみると、


かなりきわどい格好をした女性の写真だった。


木下もそれに気づき、特にあわてる様子もなく自然な動きでその写真を拾い、


「俺だってまともな人間だって!」


『むしろお前はケダモノだろ!!』


俺ら三人の声が見事に合わさった怒鳴り声に圧倒された木下は、その場でシュンと落ち込んでしまった。

自分のポッケからやらしい写真が落ちても全く動じないとは、あそこまで行ってしまうと、人としてもう手遅れなんだなと、ある意味参考になった。


「でさ、柴田君引き受けてくれるんだよね?」


木下のことなど構いもせず、夜佐神が改めて尋ねてきた。

てか、その言い方だとまるで俺が了承したみたいじゃねぇか。


「俺が引き受けること前提で話し進めるなよ。だいたいこっちに得ねぇじゃねぇか。」

「それについてさっき話してたのに、やっぱり全く聞いてなかったのね。どうせ柴田君には興味ない話だったよね、別に私はブツブツブツ………」


なぜか夜佐神がいじけるように口をとがらせ、一人でブツブツぼやき始めた。

もちろん俺にはなんのことかさっぱりわからん。


「柴田君。」

「あ?」


今度は香川が呼びかけてくる。
さっきからこの二人、いや、変な奴を入れて三人だが、さっさと自席に戻ってほしい。

もうすぐ授業が始まることなど頭に無いのか?こっちは寝たくて仕方ないってのに。