「思わないよ。」

当然のように答える。

「だって、証拠がないじゃん。
いくらすごい高得点を取ったからって、それが不正行為の証拠になんかならないでしょ?」

「………」

カンニングって、証拠なんて残らねぇだろ。

なんてくだらないツッコミもする気にはならなかった。
夜佐神の言葉に、答えようがなかった。

ここまで素直に人に信用されたのなんて、千秋以外に何年ぶりだろうな

そう思うと、なんだかいたたまれなくなった。



「……世の中不公平だぁぁ!」

ようやく現世に舞い戻ってきた木下が泣き叫び始めた。

「なんでおまえが百点取れて、俺が28点なんだ!なんだこの差は!違いはなんなんだ!」

あまりのやかましさに耳をふさぎたくなる。
てか、おまえとだけは一緒にしてほしくない。

すると木下はなにを思ったのか、涙目で俺を指さすと


「今日の補習、リヒトも残れ!」

「はぁ!?」

急な木下の発言に思わず憤慨する。訳が分からねーっての。
がしかし、木下は俺の返事を全く待たずに


「じゃそういうことだから。」


「待てやぁ!何で俺がおまえと一緒に補習に残らなきゃならねぇんだよヘッポコ頭!」