目の前に立ち並ぶ並木道の桜の木が、一本残らず咲き誇っていた。

きれいな無数の桜の花びらが、ゆらゆらと宙を舞って、よりきれいに見える。
ジョギングの途中だったであろうオッサンが足を止めて見とれる気持ちもよくわかる。

桜並木の横には浅い川が綺麗な音を立てて流れていて、いっそう和んでしまう。

なんかもう、帰りたくなってきたわ。
こんな清々しくなった後に学校とか、一気にテンション下がるわ。

…まあ、今日は入学式だけだし、このきれいな光景は春のうちは毎日見ることになるだろうし、別にいいんだが。

並木道をしばらく歩くと、大通りへと続く曲がり角が見えてきた。
その角を曲がると、柄の悪そうな金髪と茶髪の男子生徒二人が馬鹿笑いしながらこちらに歩いてきた。
正直耳障りだし目障りだったが、無視してあるいていると

ドンっ!

向こうは全く前を見ていなかったらしく、金髪の男子生徒と肩をぶつけた。

「ってぇじゃねぇかおい!」

案の定金髪の男は雑魚臭を撒き散らしながら、俺に絡んできた。
「あぁ?」

俺は金髪の男を眉間にしわを寄せた表情で睨み返す。どう考えたっててめぇからぶつかってきただろうが。

すると、茶髪の方の男がじーっと俺の顔を観察し、

「あ、こいつマジヤンの柴田じゃね!?」
と思い出すように声を上げた。

「あ?こいつが噂の?」

茶髪の発言に金髪の男が食いつく。茶髪の男はもう一度俺を観察しながら
「間違いねぇ。髪も金髪だし。」

まぁ、確かに俺は金髪だ。
「つんつん頭だし」
セリフの冒頭に「髪型が、」て入れてほしかったな。

「悪魔みてぇな顔だし」
黙れてめぇ。

悪かったな悪魔みたいな顔で!ヘビとコオロギみたいな顔したお前らに言われたくねぇっての!