すると夜佐神は、自分のつま先に視線を落とし、
「確かに、私は楽しいクラスを作るために委員長に立候補した。
でも、その主な目的は、柴田君をクラスに馴染ませるためだよ…」

「は?」

意表を突く言葉に、拍子抜けた声を上げる。


夜佐神は両膝の前で手を組みながら、思い返すように

「中学生の頃さ、私、すっごくおとなしい子だったの。今でいう、陰キャラっていうのかな……
ずっと教室の端っこで、本ばっかよんでたんだ……」
そう静かに話し始めた。
陰キャラ?今の明るそうなこいつからはあまり考えにくい話だ。

「友達だってほとんどいなかったし、一日の大半は一人で過ごした。
本に心を閉ざしていたの…。」

「…………」

落ち着いた様子で続ける夜佐神の言葉を、俺は隣で座ったまま黙って聞いていた。