「見に覚えがねーな。転校生か?」

「なわけあるか!入学初日に転校してくる奴なんていねーよ!」


木下とやらが見捨てられた子犬のような涙目で叫ぶもんだからかなり耳障りだ。


「で、…き何とかは俺になんの用だ?」
「木下だよ!まだ名乗ってから十秒も経ってないよ!?」


「わぁったようっせーな。
きのやまは俺に何か用なのか?」
「もうすでに間違ってるよ!名前覚える気ゼロか!」

なんてやかましい奴だ。さっきまでの静寂を返してほしい。

木下は諦めたといった様子で嘆息をつき、


「そんなことより、まさか一日目にしてあの大野と激突するとは思わなかったぜ。」

「大野?」

聞き慣れない名前に、俺は反射的に聞き返す。

「柴田がさっきいがみ合ってた赤髪の女の名前だよ。
大野飛鳥(おおの あすか)。女子のくせに男勝りな性格で、ナンパしてきた不良グループを一人でボコボコにしちまうほど喧嘩っ早い。
中学の時は危険人物だの暴君だの呼ばれてたな。」