古い2階建ての木造アパートは築30年。2階の和室1Kで私は1人住んでいる。
家族で住んでいた家から持ち出せたのは、ベッドと古い勉強机、テーブルだけだった。
他の家具は全て負債の返済に充てられた。
そんな質素な部屋の中、私は必死で親戚中に電話をかける。
「お願いします!手術の費用を…」
無情にも電話はすぐに切られてしまう。それでも私は掛けまくった。
「愛那を助けて!」

「…会社の資金のためにパパもこんな風に苦しみと悲しみを味わったのかな」
電話を掛け尽くして、かれてしまった声で呟いた。
私たちを預かるのさえ、嫌がっていた親戚達が、そんな大金を出してくれるわけがなかった・・・。