「どうして!どうして、パパとママなの?!」
それは突然やってきた。

二つ並んだベッドには白い布が顔に置かれた男女の遺体。
「パパ!ママ!嫌だよ!!起きて」
私は泣きじゃくる妹の愛那〈えな〉を抱きしめた。
「雨で視界が悪い中、対向車線を右折してきたトラックを見落としたようで…。残念ですが、ほぼ即死でした」

小さいながらも会社を経営する父と、専業主婦の母。
優しかった二人は、雨の日に交通事故で逝ってしまった。
私、真侑〈まゆう〉と11歳の妹・愛那を残して…。

資金繰りに毎日出掛けていた父。
だいぶ前から経営は苦しかったらしい。
今のこの不景気の中では、珍しいことじゃない。

あの日、父と母は揃って母の実家へ融資をお願いしに行っていた。
反対を押し切って父と結婚した母を許さなかった祖父母。
門前払いされ、失意の中の事故だった。
父は対向車線を右折してきたトラックを見落とし、正面から突っ込んだ。

死亡保険金も自宅も全て、負債の返済に充てられ、私たちは二人にはほとんど何も残されなかった。