そして先月の11月。
いけないと分かっていたものの、ついに体の関係までに私達は発展していた。ラブホテルに一緒いる時の翔は普段以上に優しくて…ずっとイチャイチャして本当の恋人同士のようにいられた。けれど一歩外へ出ると翔は全く私に触れることさえしなくなる。ずっと期待してた“好き”という言葉もこの頃になっても聞けないでいた。
当時の関係を一言で現すなら“セフレ”がピッタリだと思う。
でも、それでも馬鹿な私は良かった。翔とエッチしている時は嫌な事も辛い事も忘れられて…何より幸せだったから。それに翔の事を信じていた。このまま想い続けていればきっと翔は振り向いてくれるって。何の根拠もないのにそう信じて待っていた。
けれどそんなセフレな関係は1ヶ月で終わる。12月になってから翔からのメールは確実に減っていたのだ。今度はいつ遊ぶかなんて話しも一切しない。
そんな時だった、友達から思いがけない事を聞いたのは。
「瑠奈ちゃんが好きなさ…眼鏡のお兄さん…鈴木さんだっけ?大丈夫なの?」
「ん…そうだけど…どうして?」
「うーん。こないだ私が働いてるパン屋さんで見かけたんだぁ。女の人と一緒だったんだよね。」
「え……」
「…あ、でも人違いかも!似ている人なんて沢山いるし!もしそうだとしても女の方全然可愛くなかったし!」
そう慌てて弁解する友達の言葉は頭からすり抜けてた。頭が真っ白だった。翔が女の人と…?
じゃあ今月から急に連絡が減ったのも、遊びに行こうと言わなくなったのも…もしかしてそういうことなの…?
そう繋がった気がした…でも似ている人なら良い、もし翔でも彼女だとは限らない、そう自分に言い聞かせていた。
「あ、そういやさ!
先週虹色デパートのパン屋さん行かなかった?」
「パン屋さん?…あぁ…うん、確かに行ったね。なに、俺目撃されてた?」
「んー?秘密っ♪」
私の願いも虚しく、友達が見たのは翔に間違いないらしい。この時は仕事中でもあったし、それ以上は聞かなかった。聞けなかったというのが正しいのかも。“彼女?”と聞いて“そうだ”と言われたら絶対その場で泣いちゃう。